リモートワークで副業猟師

山本暁子さんの事例

「Uターン」や「Iターン」といった言葉がよく聞かれるようになったように、近年、都会から地方への移住が注目されています。しかし田舎への移住は“人付き合い”の難しさや、収入の不安といった、数々の問題が潜んでいます。
 山本暁子さんは大阪の都市圏から、鳥取県鳥取市国府町の田舎町に移り住んだ移住者です。この地で山本さんは、猟師として地元との関係性を築きながら、オンラインの仕事で収入を得るという、ライフワークバランスを実現しています。

移住先で見つけた『猟師』への道


山本暁子さん夫妻は、亡くなった祖父の家を引き継ぐ形で、鳥取県国府町に移住してきました。初めはまったく狩猟のことを知らなかったという山本さんですが、地元の人たちと交流を深める中で野生鳥獣被害の深刻さを知り、狩猟免許を取得して猟師への道を歩んでいくことになりました。

もちろん猟師になることは簡単ではありません。特に女性である山本さんは男性に比べて筋力という面でハンデがあり、また、女性が狩猟をすることを良く思わない人からの目も厳しかったといいます。
 そのような山本さんは、初年度はまったく獲物が獲れませんでしたが、地元の人たちの協力や試行錯誤により、4年目で年間200頭の獲物を捕獲する凄腕猟師に成長しました。

地元に溶け込む猟師の仕事


「猟師の仕事は生計の足しになっただけでなく、地元に溶け込むきっかけになりました」と山本さんが語るように、移住者が地元に根を張ることは、非常に難しい課題です。
 現在、日本全国で地方移住がブームになっていますが、実をいうと多くの人は移住後数年で出て行ってしまいます。これには「地元が移住者を受け入れなかったから」という理由もありますが、逆に「移住者が地元に馴染めなかったから」という理由もあります。
 よって移住者が移住先に溶け込むためには、普通は何年、何十年と地道に地元に貢献し、少しずつ地元住民との摩擦を解消していくしかありません。

しかし猟師という存在は、地元に素早く溶け込むことができる、かなり特殊な仕事です。なぜなら、猟師は地域住民とコミュニケーションを取る必要があるため、すぐに顔と名前を憶えて貰えるという効果があります。また猟師の活動は、『野生鳥獣被害から地元を守る』という大儀があるため、地元への貢献度が非常に高いといった特徴があります。
 このように猟師という仕事は、移住者が地元へ根付くための基盤づくりを行えるという、大きなメリットもあるのです。

副業としての猟師


移住を考える人はしばしば、「田舎だから生活費は安いはず」と考えがちですが、それは誤解があります。確かに土地代や住居費は都会よりも安く済みますが、光熱費、通信費は都会とあまり変わりませんし、食料品や日用品などの物価は意外と田舎の方が高かったりします。また田舎では車が生活必需品となるため、維持費や燃料費が馬鹿になりません。
 そのため山本さんは、昼間は猟師の仕事をしながらも、空いた時間でインターネットを利用したオンライン塾講師や、プログラマーなどの仕事を請けて収入を得ています。
 猟師の仕事は天候に左右されたり、時期によって獲物がまったく獲れない時期もあります。そこでこういった時間をフリーランスの仕事に使い、上手く生活スタイルと収入のバランスを築いています。
 大昔の猟師は、春から夏にかけては農業や炭焼きをして生計を立てていたと言われています。つまり山本さんは、それらの仕事をテクノロジーを利用した仕事に置き換えた、まさに現代型猟師の働き方といえます。

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